あだち充原作の少年野球漫画「タッチ」。
週刊少年サンデーに1981年~1986年の間連載されました。
アニメは常に視聴率20%以上を記録し、原作は2019年現在で単行本、文庫本を含め約7,000万部を超えるといわれるほどのヒット作。
作品が終了し30年以上たった今でもこの作品のヒロイン・浅倉南は理想の女性キャラランキングで上位に入るほどの根強い人気がある。
目次
タッチのあらすじ
上杉達也・和也は双子の兄弟。何事もストレートかつ一生懸命で成果を上げていく弟・和也に対して、才能を持ちながらも弟に遠慮し実力を出し切れずにいる兄・達也。
2人の家の隣には浅倉南という同じ歳の女の子がいて、物心ついた時から3人はずっと一緒に過ごしてきた。
兄弟のように育った3人だったが、成長するにつれ、上杉兄弟は南を、南は達也に対して好意を持ち始める。
高校へ進学し、和也は野球部へ入部する。優秀なピッチャーで甲子園確実とまで言われ、期待されるほどの人材だったが、地区大会決勝当日に事故にあってしまう。
野球経験のない達也が亡くなった弟と幼馴染・南の夢や周囲の期待を受け継ぎ、甲子園を目指す物語。
タッチ名言・名台詞集
上杉達也の名言
きれいな顔してるだろ。
「きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。それで…。
たいしたキズもないのに、だた、ちょっと打ちどころが悪かっただけで…
もう動かないんだぜ。な。ウソみたいだろ。」
和也が交通事故で亡くなった時の達也のセリフ。淡々と語られるセリフが痛々しく感じられる。
そうだな…こんなとき、やさしい女の子なら………
「そうだな…こんなとき、やさしい女の子なら………だまって、やさしくキスするんじゃないか……」
南と達也の初めてのキスシーン。
初めてのボクシングの試合、南に「必ず勝て」と言われ、その約束を守ろうと頑張る達也。しかし試合に負けてしまい落ち込む。
南は余計なプレッシャーを与えたことを謝るが、なおさら惨めになるからやめろと言われてしまう。じゃあどうすればいいのよと聞き返した時の達也のセリフ。達也は冗談のつもりだったが、南は本当にキスをした。
「男は好きな女のためだと、自分でもおどろくようなことができちまうもんだよ。」
刃物を持った暴漢に襲われそうになった由加を庇って負傷した佐々木。
気が付いたら身体が勝手に動いていたという佐々木に、達也が言ったセリフ。
最初からビビってたらそれまでだぞ
「腕たてふせ200回も刃物も同じだろ、最初からビビってたらそれまでだぞ。
やればできるかもしれねえし、やらなきゃなにもできねえ。」
佐々木は腕立て伏せ200回をやり遂げた達也を見て、自分にはとてもできそうにないと言った。想いを寄せている由加に達也と比べること自体間違っていると指摘されてしまう。
あらためて自分と達也の差を感じて落ち込んでしまった佐々木に達也はこう励ました。
積み重ねたものがねえんだよ。きっと大事なとこでボロがでる
「どんなに速え球投げたって、和也とちがって裏づけがねえんだよ。
積み重ねたものがねえんだよ。きっと大事なとこでボロがでる。そして一度崩れたらボロボロさ。」
準決勝の試合前、達也は緊張と不安で球場を抜け出して南風へ来ていた。
和也が死んでからひたすら甲子園に向けて努力してきた達也が初めて弱音をはくシーン。
おれは上杉達也でなきゃいけないんだ
「和也…監督のいうとおり、おまえのコピーにおまえが力を貸すわけないよな。
おまえの性格はおれが一番わかってたはずなのに…おれは上杉達也でなきゃいけないんだ。
おまえと一緒に甲子園にいくためには…だろ?」
決勝戦・須見工との試合で達也は和也に徹する。しかし柏葉監督の言葉により、それでは須見工に勝てないと気づき、自分らしさを取り戻すシーン。
「リンゴです。」
達也はそう言って目の見えない柏葉監督に須見工戦の記念ボールを渡した。
甲子園行きを決めた記念ボールは南でもなく、和也でもなく、柏葉監督に手渡された。
「上杉達也は浅倉南を愛しています。世界中の誰よりも。」
甲子園へいくために今まで頑張ってきた達也。その目標が達成されこの先どうしたらいいのかわからなくなってしまう。
そして甲子園の開会式をすっぽかし、南のところへやってきて自分の気持ちを告白した名シーン。今まで自信を持てずにいたが、やっと南に対して想いを伝える覚悟ができたのだろう。
上杉和也の名言
「南はアニキに期待したんだよ!裏切ったりしたら承知しないからな!」
周囲の不安を押し切ってクラス対抗リレーに達也を推薦した南。しかし達也は全く練習しようとしなかった。
達也のフォローをする南を見るに見かねて和也が達也に意見した。普段は優しくキツイことは言わない印象の和也が、南の事となると別だった。
「勝ったほうが南を嫁さんにできる。」
和也は、達也が初めてのバイト代をはたいて自分のグローブを買ってくれていたことを知る。遊びで始めたポーカーでさえ、自分に勝ちを譲ってしまう。
優しすぎる兄の本気を引き出すためにポーカーの賞品を南にしようと提案してみるが、南に阻止されて勝負はお預けとなる。
「まず南を甲子園につれていくことで、先取点をねらいますので…よろしく!」
地区大会決勝戦の当日。和也が試合前に家の庭で達也に宣戦布告した。
南の気持ちが自分にないことに気付きながらも、諦めず正々堂々と宣言できるところが努力家和也らしい。
浅倉南の名言
ときには暴力も必要なのよ
「ときには暴力も必要なのよ。でもね、人の心を傷つける暴力だけは、絶対にいけないんだから。」
不良に絡まれたところを原田に助けてもらった少女が、そのお礼に手編みの帽子を編んだ。それを原田に渡すように頼まれた達也だが、原田は受け取ろうとしなかった。
その態度に南が原田を平手でビンタして意見した時のセリフ。
「甲子園につれてって。」
達也は和也がどんな気持ちでマウンドに立っていたのかわからなかった。しかし、南に「一生懸命投げて南を甲子園につれていくこと」と言われ、その想いが和也のボールに力を与えていたのだと確信する。
そして同じ効果を出せるかわからないが、改めて自分にも期待して欲しいと告げる。南に改めてこのセリフを言ってもらい、達也は新田から三振を取った。
「南のファースト・キスなんだぞ。ありがたく思え。」
南にキスをされた達也、その翌日「なんでキスなんかしたんだよ。」と問いただします。南は「たっちゃんだから」と答えた後でこのセリフを言った。
学校で和也とベストカップルと表彰され騒がれたりもしていたが、全く影響されず自分の想いを貫けるのが南のいいところだ。
生まれて初めてのキスなんだもの
「南は忘れないからね。…一生!好きな相手との、生まれて初めてのキスなんだもの。おやすみ。やさしいお兄さん。」
達也にこの間のキスのことを忘れろと言われた時の南のセリフ。
達也がそう言った理由を理解してはいても、好きな人にこんなことを言われて傷つかない女の子はいないだろう。
「野球部の美人マネージャー」で「新体操部期待の星」など南の長所はたくさんあるが、
自分の気持ちに素直だけれど、決して押し付けすぎない、この絶妙な匙加減も南の人気の秘密かもしれない。
松平 孝太郎
おまえが和也になる必要はねえよ
「おまえが和也になる必要はねえよ。自分のことより上杉達也がガンバることのほうがうれしいんだから、あいつは…」
和也と違い本気で投げるとフォームがメチャクチャになる達也の投球。孝太郎は達也らしくていいと褒めた。
和也が死んで、達也が投手をやることに反対していた孝太郎も「和也の代理としての達也」ではなく、「達也」を仲間として受け入れているのだと改めて感じられる名言。
「あと一人!しまっていこうぜ!」
地区大会決勝戦、明青学園vs須見工業。5-4、10回裏ツーアウト、そしてバッターは新田。
常識で考えればここは敬遠する場面だった。そして試合を観ていたほぼ全員がそうすると予想した。達也も個人的な感情を優先せず、勝利に徹するために敬遠を選んだ。
だが、孝太郎は達也の気持ちを尊重し外野に守備を固めるように指示を出した。そしてチームメイトも素直にそれに従った。チームの心が一つになった名場面。
「一人にさせないでくれよな。もう二度と…。」
須見工との試合に勝利した明青学園。帰り道、限界以上の力を出し切って倒れそうな達也をみて別れるのが不安になった時の孝太郎のセリフ。
達也も孝太郎にとっては失いたくない相棒になっているのだと感じさせる場面。
柏葉英二郎
「――だったら、甲子園にいくんだな。」
柏葉監督に「俺はおまえが嫌いってことを忘れるな」と釘を刺される達也。
「どうせなら徹底的にきらわれてみたいもんですね」と達也に言われて返したセリフ。
明青野球部に復讐するつもりでいた柏葉だが、野球部員たちの純粋さ、素直さを目の当たりにして、最後には勝利へ向けてアドバイスをするようになった。
「夏は好きなんですよ。」
目の手術で入院することになった柏葉監督。看護婦に「暑いでしょう、クーラー付けましょうか」と言われて、「このままでいい」と言った後にこのセリフを付け加えた。
「夏」は野球の季節を指していて、ずっと野球を憎んでいた柏葉が野球を好きなことを認めたともとれる。心に残る名言の一つ。
原田 正平
「おまえはすこし殴られる必要があるのさ。でなきゃ、おまえからは殴らねえだろが…」
達也は気が付くと原田の策略でボクシング部に入部することになってしまった。
達也に「なんなんだよこれは」と尋ねられた時の原田の答え。原田もまた達也の優しすぎる性格と素質を見抜いていた理解者の一人だった。
バカなことをいうな!
「バカなことをいうな!なんでもかんでも死んだ男のせいにされたちゃ、流す汗の意味がなくなるぜ。」
須見工相手にトリプルプレーを取った明青学園。
奇跡ともいえるラッキーの連続に南はカッちゃんのおかげじゃないかと言いかけるが、原田がそれを制した。
新田 明男
「だけど、あいつは、上杉達也は誰と戦えばいいんだろうな。」
新田は和也と戦うために野球を始めた。その夢はかなわなかったが、和也の想いを背負った達也と勝負することができる。
和也を失ったことで落胆した周りの人間の想いは、達也が身代わりになることで果たされようとしている。
しかし肝心の達也自身は、片割れの和也を失った気持ちを埋める人間がいない、そして戦うこともできないのだと気づかされるセリフ。
「ホームランを数えているうちは四番にはなれないぞ。」
何かと新田にライバル意識を燃やす後輩・大熊。
終盤戦ここぞという時にホームランを決めた新田に「6本目ですか」と声をかけ、新田は大熊にこう答えたのだった。
西村勇
「いいもんだよな、幼なじみってのは…… たとえ、それがどんな―― 」
腕の調子が悪く、試合に負けてしまった西村が達也の元へやってきて、心境を語るシーン。
普段は邪険に扱っていても幼馴染を大切に思っていることがわかる。西村の人柄が伝わる名言。
まとめ
この時代の代表的な野球漫画といえばスポ根ものが主流だったが、タッチは恋愛要素や個性的な脇役たちをうまく取り入れ、あだち充独特の世界観のある作品に仕上がっている。
あだち充の作品はセリフだけでなく、表情や情景で主人公たちの心情が語られているため、セリフのない名場面も数多く存在する。言葉だけでは語りつくせない感動をぜひ味わってもらいたい。