「鼬の怪」とは、江戸時代に書かれた書物「兎園小説」に記されているイタチの姿をした妖怪です。
イタチはキツネと同等、あるいはそれ以上に化けるとされており、秋田県や群馬県、福島県等日本各地に様々な伝承が残っています。
「鼬の怪」の伝承
鼬の怪には様々な伝承があります。その多くは怪物に化けたり奇病にしたりと人間に対して害を与える事が目立ちます。
「兎園小説」によると、ある年に娘が病にかかり、その症状は身体中から針のような物が出てくるという奇病でした。この奇病の正体こそが鼬の怪であり、夜になると寝ている娘の周りや布団の下を走り回っているという噂がたったと記されています。
「鼬の怪」の物語
人間に害を与える事が多い鼬の怪ですが、群馬県と秋田県に伝わる物語は少し変わった物語です。
群馬県に伝わる話では「イタチの顔立ちはとても良いので、ちょっと顔を出しておくれ」と囃し立てると、鼬の怪は得意気な顔をして手を挙げながら姿を現したそうです。
秋田県の横手に伝わる話では、「龍泉寺」というお寺に住み着いてしまった鼬の怪の物語があります。
この鼬の怪は住職が木葉に経文を書いた所、子供を産んで死んでしまいました。死んだ鼬の怪は住職の枕元に現れると、「この子は私の生まれ変わりです。どうかこの子を引き取って育てていただけませんか?」と住職に願います。
住職がその子供を引き取って大事に育てると、子供は立派な大和尚に成長し、様々な法力を使って人々を助けたと伝えられています。
「鼬の怪」の正体
日本各地に伝わる妖怪ですが、イタチが長い年数を生きて妖力を得てた事で鼬の怪になると言われています。
鼬の怪がどうして人間に害を与えるのかは分かりませんが、非力なイタチの時代に罠や銃で狩られた仲間の敵討ちをしているのかも知れません。