「愛宕山太郎坊」とは、京都にある霊山の1つ、愛宕山に住まうとされる強大な神通力を持つ大天狗です。
「日本の八大天狗」に数えられており、その力は八大天狗達の中でも最強クラスと言われています。
「愛宕山太郎坊」の伝承
強大な神通力を持つ愛宕山太郎坊は「愛宕権現」として全国の愛宕社で祀られています。ご利益として、勝利や火による災難、盗難等を防いでくれると伝えられています。
また、多くの天狗達を従えるだけでなく、数多くの術を使う事ができたため、別名「栄術太郎」と呼ばれる事があります。
太郎坊は背中に翼を生やした姿が描かれている事がありますが、猪に跨がって現れるとも言われていたため、愛宕神社では猪を神使としています。
「愛宕山太郎坊」の物語
愛宕山太郎坊には多くの伝承が残されていますが、その中から1つご紹介させていただきます。
平安時代に記されたとされる書物「今昔物語」には、愛宕山に古くから伝わる話等も記載されています。
その話によると、奈良時代の修行僧であり山岳密教の開祖でもある「雲偏上人」という人物が愛宕山を開山したそうです。
雲偏上人が愛宕山で秘術を使って祈り続けていると、大天狗達と共におびただしい数の天狗達が集まってきたと記されています。
この天狗達を従える大天狗は雲偏上人の側に生えていたスギの大木に現れており、インドの大天狗「日羅(ニチラ)」、中国の天狗の長「是界(ゼカイ)」達と共に現れたのが太郎坊であると言われています。
太郎坊が現れたスギの大木は今でも現存しており、「愛宕の山神のヒモロギ」として神聖な物とされています。
「愛宕山太郎坊」の正体
とても偉い大天狗の愛宕山太郎坊ですが、その正体とされる物がいくつか伝わっています。
愛宕山太郎坊は、日本神話では天孫降臨の際にアマテラスの御遣いであるニニギノミコトを道案内した国津神・サルタヒコと同一視される事もある他、国造りの神の1柱であるイザナミを自身の誕生の瞬間に焼き殺した火の神・ヒノカグツチであるとも言われています。
先導神のサルタヒコと同一視される理由は不明ですが、天狗は火を操り大火を引き起こすと考えられているため、ヒノカグツチと同一視されるのは理にかなっているのではないでしょうか。