「産女」とは、「ウブメ」と読み、「姑獲鳥」「憂婦女鳥」と表記される事もある鳥の妖怪です。
日本各地に伝承が残り、夜になると子供をさらうとも言われています。
「産女」の伝承
産女は中国と日本で伝承が残っており、日本の伝承ではカモメに似た姿で死産した妊婦や産褥に耐えられなかった妊婦をそのまま埋葬すると産女になるとされています。
子供が胎内にいるまま亡くなり、腹を切開して取り出した子供も命を落としている場合は、その子供を抱かせたり背中に背負わせるようにして埋葬する事で産女になる事を防いだそうです。
「産女」の物語
基本的に鳥の姿で描かれる事の多い産女ですが、人の姿で現れる事もあるそうです。
「百怪図巻」や「幽霊之図 うぶめ」では血塗れの腰巻きをした女性の姿で幼子を抱いている様子が描かれています。
産女はカモメのような鳥の姿から人の姿に化ける事があるとされ、人に会うと「この子をおぶってくれませんか?」と頼んでくるそうです。
言うとおりにしてあげると産女は喜び害はありませんが、逃げ出してしまうと産女はその人を祟り、謎の病と高熱によって死んでしまうと言われています。
また、中国神話の「姑獲鳥」は天帝の娘という伝承もあり、普段は鳥の姿ですが羽を脱ぐと美しい娘の姿になる事ができます。姑獲鳥は子供をさらって育てますが、姑獲鳥に育てられた子供は姑獲鳥に育つとも伝えられています。
「産女」の正体
産女の正体ですが、生きて子供を産む事ができなかった妊婦の霊、母の妄執が形を成したものとされています。
母子共に命の危険がある出産や産褥ですが、現代でも危険性は変わらず尊い命が失われているのも事実です。
昔なら尚更の事、医療も処置も現代とは全く違うのでより多くの妊婦が亡くなっていた事も容易に想像がつきます。
子供を産めなかった母の無念は如何なるものなのでしょうか。
余談ですが、産女は「ヲバレウ、ヲバレウ」と鳴くそうです。「産まれる、産まれる」とも取れるこの鳴き声、聞こえたなら子供と自身の安全に気を付けなければなりませんね。