「板鬼」とは、「今昔物語集」に記載されている板のような姿をした妖怪です。
元々は「板の鬼」と呼ばれていました。
「板鬼」の伝承
名前に「鬼」が付くため鬼が化けた板か取りついた板のように聞こえますが、鬼とは関係がありません。鬼の字がついている理由は、今昔物語集が書かれた時代は妖怪や魂の事を「鬼」と呼んでいたためです。
見た目は普通の板のようですが、意思を持ち、その長さを変える能力が伝えられています。
「板鬼」の物語
昔、ある夏の日の事です。2人の若い侍が宿直という仕事をしていました。
夜も更けてきた頃、若い侍がふと建物の棟の上辺りを見ると、板が1枚突き出ていました。「誰かのイタズラか?」と思っていると、その板はぐんぐん伸びて飛び出し、2人に向かって来たのでした。
若い侍は刀を抜いて臨戦態勢に入りましたが、板は2人に襲いかからず傍らにあった格子の隙間に入って行きました。その格子の向こうには5人の侍達が寝ていたのですが、部屋から苦しそうな呻き声が聞こえたため灯りを持って急いで部屋に向かったそうです。
しかし、部屋は悲惨な状態になっており、寝ていた侍達は何かに押し潰されたように死んでいたのでした。しかも、犯人であろう板の化け物の姿はどこにもありません。
板の化け物が、刀を持ち自分を斬ろうとした若い侍を避けて刀を持たず無防備に寝ている侍を襲った事を知った人々は、「男という者はいついかなる時でも刀を手放してはいけない」と戒めあったそうです。
「板鬼」の正体
長さや質量等を変える能力がある板鬼ですが、その正体は木霊だと思います。基本的に木霊や魑魅魍魎は人間に無害な事が多いそうですが、自然を蔑ろにしたりすると凶暴化する事もあるそうです。
昔は竹や板は刀の試し斬りに使われる事もあり、その怨みから板鬼が生まれたのかも知れません。