「囲碁の精」とは、江戸時代の妖怪に関する書物に記されており、囲碁の精霊とされています。
囲碁が好きな人の元に現れ、一緒に囲碁をする事もあります。
「囲碁の精」の伝承
大切にされた囲碁の石や碁盤に魂が宿り「付喪神」になったものとも言われています。
囲碁が好きな人の前に現れ、一緒に囲碁をしたり会話をして仲良くなると、囲碁の腕が上達すると伝えられています。
「囲碁の精」の物語
幾つかの話が伝わっていますが、そのうちの1つをご紹介させていただきます。
かつて、清水昨庵という人が江戸の牛込という所に住んでいたそうです。この昨庵という人は、とても囲碁が好きな人物でした。
そんな彼が柏木村の円照寺というお寺を散策していると、色白と色黒の2人組が話しかけてきました。会話も弾み、すっかり打ち解けた昨庵は、2人に名前を尋ねてみました。
すると、色黒の方は「私は山に住んでいる知玄です。」と名乗り、色白の方は「私は海辺に住んでいる知白です。」と名乗りました。この2人組はそれっきり姿を消してしまい、昨庵が再び出会う事はありませんでした。
しかし、この2人組に会ってから昨庵の囲碁の腕前はメキメキと上達し、江戸最強の囲碁名人となったそうです。昨庵が出会ったこの2人組こそ「囲碁の碁石の精」であり、この2人が現れたとされる円照寺は東京都の新宿区に実在しています。
「囲碁の精」の正体
囲碁の精は、囲碁の碁盤や碁石に魂が宿り付喪神となった存在とされています。きっと元の持ち主は本当に囲碁が大好きで、道具も大切にしながら毎日のように囲碁をしていたのでしょう。
その影響もあってか、囲碁の精となった後も囲碁好きな人の前に現れたり一緒に囲碁を楽しみ、その腕前を上達させてくれるとてもありがたい精霊になったのだと思います。
有名な某囲碁のマンガでは、囲碁好きな貴族の霊が囲碁の道具に憑いており、主人公に囲碁を教えてくれます。これも囲碁の精の1種なのかも知れません。