「縊鬼(イツキ)」とは、中国、日本で語られる妖怪です。
人に取り憑いて首吊り自殺をさせるため危険な妖怪とされています。
「縊鬼(イツキ)」の伝承
日本で語られている伝承では、縊鬼は水死者が化けたものとされています。
縊鬼に取り憑かれてしまうと自ら川や海に飛び込んだり、首を吊ったりと自殺衝動に駆られてしまうと伝えられています。
「縊鬼(イツキ)」の物語
「反古のうらがき」という書物には縊鬼に取り憑かれた人の話が記されています。
昔、江戸の麹町という所で組頭が酒宴を開きました。そこにはもう一人参加するはずだったのですが、なかなか来ません。ようやく酒宴にやって来たその人は「急用ができたので断りに来た」と言いましたが、組頭は問いただしました。
するとその人は「首を吊る約束をしたんだ」と言って帰ろうとしたため、組頭は彼を引き留め、酒を飲ませて落ち着かせたそうです。
しかし、しばらくすると喰違御門で首吊り自殺が起きたという報告が届きます。これを聞いた組頭は「取り憑いていた人を殺せなかった縊鬼が別の人に取り憑いて殺した」と考え、今なら取り憑かれていないはずの酒宴の男性に質問をしました。
すると彼は「喰違御門に来たら誰かに首を吊るように言われた。酒宴には急用ができたと言って参加を断って来いとも言われた」と語ったのです。最後に組頭は「今でも首を吊りたいか?」と聞くと、その人は「とても怖い」と言いながら首を吊る素振りを見せたと書物の中で語られています。
「縊鬼(イツキ)」の正体
縊鬼は水死者の魂が化けたものとされています。しかし、取り憑いた人を次々と自殺に導く悪質な性格から、死ぬ間際にかなりの悪念を持っていたと思われます。
現代でも自殺の多さは問題になっており、元気いっぱいだった人が自殺していた、という事もあるようです。もしかしたら、それも縊鬼によるものかも知れません。